Tuesday, January 17, 2012

女児という理由で中絶:「最も極度な女性差別」“It is discrimination against women in its most extreme form” Dr. Rajendra Kale

1月16日以降、カナダで最も権威ある医学ジャーナルCanadian Medical Association Journal(CMAJ)に発表されたドクター・ラジェンドラ・ケールのエディトリアルをめぐって大きな議論が起きている。


ドクター・ケールによれば、「インドや中国でいちじるしい女児の中絶は、数は少ないがカナダでも起こっている。女児の中絶は”女性に対する差別のうちで極端にひどいもの(It is discrimination against women in its most extreme form)”であり、これを防ぐためには性別判定の結果を妊娠30週以前に伝えることを禁止すべきである」。


現在、カナダでは親が望めば妊娠18-19週で性別を知らせてくれる。妊娠30週以降の中絶はに困難が伴なうため医療関係者は推奨しない。


女児を望まない両親による女児の中絶は、インドや中国では数万件という単位で起こっているが、トロント周辺の南アジア系コミュニティでもかなり行われているとされる。The Toronto Star紙によれば、2006年の国勢調査のデータでは、カナダ全国の15歳以下人口で見ると南アジア系コミュニティでは男子1000人に対して女子932人と、一般人口での男子1000人に対する女子953人と幾分不均衡になっている。しかし、これをトロントのメトロポリタンエリア(だいたい市内にあたる)の南アジア系コミュニティで見ると、男子1000人に対し女子917人、トロント近郊のミシサガでは女子904人、さらにブランプトンでは864人と不均衡な度合いになっていることがわかる。


実際、ドクター・ケールの論評は、ブリティッシュ・コロンビア大学の経済学教授ケビン・ミリガンの研究結果に基づくもので、インド系のうちヒンドゥー教徒、無信仰者の中国系のあいだで女児の中絶が故意に行われており、こうしたコミュニティ内の男女比のバランスがいちじるしく欠けているとされる。


当然、この議論に対する批判として出てくるのがright to information(知る権利)である。とりわけ過去20年ほどの間で医療分野では患者の「知る権利」の重要性がますます強調されている。しかし、こうした議論に対し、ドクター・ケールは「胎児の性別判断は医療関連の情報ではないため、この議論は無効である」としている。また、南アジア系コミュニティだけをシングルアウトするのは差別であるとし、すべての妊婦に対して30週を課すことを求めている。


カナダの産科医と婦人科医で構成されるThe Society of Obstetricians and Gynaecologist of Canadaは、ドクター・ケールの示唆は文化的配慮が足りないと批判的な立場をとっているほか、南アジアコミュニティの中にもステレオタイプを煽るとの懸念も出されている。


この議論は、脳死や死ぬ権利をはじめとする医療技術の発展に伴なって出てきた新しい議論であると同時に、マルチカルチャー社会における移民の文化的価値と受け入れ国家の価値(この場合は女性の権利に関する価値)のあいだで起こっている問題という二面性を持っている。同じように、カナダにおける男子乳児の割礼や女性器切除(FGM)の問題もしばしば取り沙汰される興味深い問題である。


参考)
The Globe and Mail:
http://m.theglobeandmail.com/life/health/new-health/health-news/bid-to-curb-female-feticide-pushes-hot-buttons-of-abortion-and-culture/article2304046/?service=mobile#

http://www.theglobeandmail.com/news/national/withholding-sex-of-fetus-could-stop-female-feticide-doctor-says/article2304046/print/

The Toronto Star:
http://www.thestar.com/news/article/1116291--canadian-doctor-s-suggestion-to-delay-revealing-baby-s-sex-ignites-controversy-over-feticide

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