トロントの日本語マガジンbits Magazineに連載中のフードコラム「謎のフードアイテム」の転載。
今回は初回ということで、大好きな中近東料理について書いてみよう。日本では中近東料理なんて食べたことのなかった私だが(だいたい、そんなレストランは見た覚えがない)、今ではクッキング・コースを取ろうかと思うほど中近東料理への思いは深刻化している。中近東料理のすばらしさを一言で言うならば、ナスやオクラといったどこにでもある野菜を、トマトペーストやハーブ、スパイスをふんだんに使うことで、奥行きのある極上の一品として仕上げることだと思う。
その最もよい例がババガヌージュである。「近頃、ヤッピーなパーティーに行くと、これが必ずアペタイザーとして出されている」と言われるように、ここ数年トロントのヒット商品として、大手スーパーでも簡単に手に入るようになったババガヌージュ。材料は、ナスとタヒーニ(100%ごまペースト)、オイル、ガーリック。ほらね、本当にどこにでもある材料であることがお分かりいただけるだろう。見た目は、まるでビーチの砂を固めただけのようだし、「ラベルの‘ババ’がちょっとあやしい…」などとあなどってはいけない。
とにもかくにも、ババガヌージュを一口ふくんでみてほしい。そのまったりとした食感はまるでベルベットのよう。味はといえばスモーキーなナスの風味が幾層にも重なり、野菜とは思えない奥深さに「レバーのパテみたいだ!」と言ったフランス人もいたとか。とはいえ、材料と同様、作り方も至ってシンプルである。ナスを丸ごとオーブンで焼いて、中身をマッシャーでつぶす。あとはタヒーニ、オイル、つぶしたガーリックを混ぜ込んでピュレーにするだけ。「なるほどね、だからほんのり焼きナスの味がするのね」と思われることだろう。野菜スティックやピタパンにつけてアペタイザーとしてもいいし、ライ麦パンにたっぷり塗り、グリルしたマッシュルームやカリフラワーなどをはさむと、売りに歩きたくなるほどグルメなサンドができあがる。
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