10月25日、トロント市長選の結果、Rob Fordが正式にトロント市長として選出された。もちろん、私はがっかりきている、というか「誰がこんな人を選んだのよ?」と怒っている。
前にも書いたけれど、彼のアジア系市民に対する差別的コメント(彼は謝罪しなかった)、家族という価値に関しては非常に伝統的なキリスト教的価値を有する点、ライバルSmithermanへの差別的コメント(Smithermanは同性結婚をしている)、パブリック・スピーチのスキルのなさ(メル・ラストマンとどっこいどっこい)、Tax cutとSmall governmentを全面に押し出す保守・右派的立場などなど・・・、私にとってはまったく価値観の違う人なので非常に違和感を覚えている。
大手メディアはSmithermanとFordの激戦であることは認めていたものの、最後までRob Fordが市長として当選するとは予想していなかったような書き方に終始していたから、その点も興味深い。
トロントといえばカナダの最大都市。人口の半数が海外生まれで、厳密に限られた市内では、連邦政府の議員選で保守党からの議員は選出されないほど、自由党(伝統的に左派)のStrongholdとされていた。そのトロントで、洗練されているとは到底いえない右派のRob Fordが選出されたことは、一部の人たちには大きなショックだった。
トロントは右傾化をはじめたのだろうか(経済不況の影響?)
そして、いったい誰がRob Fordを選んだのか。
Globeによると、Fordを強力に支持したのは意外にも「working class immigrants」だったという。でも、Fordは「これ以上トロントに移民はいらない」というコメントで、カナダのオープンな移民政策には反対の立場をとっている。しかし、彼の言い方は「新しい移民を受け入れるよりは、すでに来ている移民の社会同化に力を注ぐべき」という、実に巧妙な言い方だった。こうした言い方に、移民の人たちも同意したのだろう。
さらに、前市長のDavid Miller(労働組合に強力なバックアップを受けていた極左市長)があまりに労働組合に甘かったことから、市民はその対応にかなりFed upしていて、その反動からFordが選ばれたとの見方も強い。とりわけ、ここ数年はマイルドな経済不況に陥っているカナダであるから、それも市民の心理に大きく影響を与えたに違いない。
市長選のあいだ、私が興味深いと思ったのは(それにカンカンに怒ったのは)、トロントのタミル語メディア(スリランカ系)が、「市長のパートナーは女性がふさわしい」と、明らかに同性結婚のパートナーとのあいだに養子もいるSmithermanのセクシュアリティを否定するコメントを流したこと。文化的なことなのだろうが、移民のなかには同性結婚を否定する人たちが少なくなく、こうした伝統的家族の価値観もフォード当選に好影響を与えたとも見れる。
とにもかくにも、フォードのプラットフォームは「減税」「節約」「小さな政府」といったネオコンサバティブ(ネオコン)のオンパレード。最近、世界中どこを見渡してもネオコン的アイデアがはびこっているが、それは非常に不快だし、心配でもある。社会福祉が切り捨てられ、公共組織の私有化へと道が開かれるのだろうか。ま、とはいっても、フォードが市長になったとしても、トロントの市議会議員の顔ぶれを見る限り、彼のイニシアチブがすべてすんなり通るとは思われない。要するに、トロント市政ではちゃんとCheck & Balanceが整っているのだ。このように、政治システムが高度に発達しているカナダだから、その点は私も安心していられる。
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