プーシキンは義父にとっては「ペット」というより子どものようなものだから、先の文章はちと感覚的にピンとこない。それより、「義父はネコのプーシキンと暮らしている」といった方が収まりがよい。北米のミドルクラス家庭では、とりわけ子どもが巣立った団塊世代の家庭では「ペット」という概念はないのではないか、というのが私の感じである。
夫は義父に電話すると、決まってこう訊ねる。
How is Pushkin?
もう明らかに家族の一員といった扱われ方で、その後、プーシキンが風邪をひいただの、近所の人からクリスマスのプレゼントをもらった(キャット・ミルク)だの、そんな会話が続く。
義父の隣に住むポールとジータにもルパートという黒い犬がいて(種類は私には分からない)、ルパートも何だか中耳炎になっただの何だので、日に何度か薬を垂らしてもらっているらしい。
義父の右隣にはマリーナという女性が3匹の犬と一緒に住んでいる。3匹の犬は冬になるとセーターを着る。ブーツもはいている(ブーツといっても靴下みたいなやつだが)。犬のブーツといえば、少なくとも私の住んでいるトロントのダウンタウンでは、しょっちゅう見かける。雪が降ると、滑らないようにと路上に撒くソルトが爪の間に入って痛むらしい。それで犬のブーツはポピュラーなのだ。
プーシキンの食事は、シニア用のキャットフードである。シニア用はカルシウムや鉄分などが強化されているらしい。肥満の気もあるので、ローファット(脂肪分控えめ)のキャットフードを併用している。
そういえば、最近時折見かける、犬用のストローラー。あれは一体どうなっているのだ? ベイビーかと思ったら、犬が乗っているのに気付いてびっくり仰天した。「帰り道には疲れちゃうのよね~」なんて飼い主は笑っていたが、犬が疲れて歩けなくなって駄々をこねる、という話は生まれて初めてだったが、犬もそこまで進化したってことなのだろうか。
ドッグ・ウォーカー(犬の散歩サービス)、ドッグ・シッターやキャット・シッター(ベイビー・シッターみたいなもの)はともかくとして、犬のデイケア(託児所=託犬所)というのもある。飼い主が留守のときは、犬もひとりでは寂しいということで、デイケアに行くのである。知人ダイアンのビーグル犬は、ときどきデイケアに行っていた。ダイアンの話ではお値段は子どもを預かってもらうくらいらしい。「スナックにはオーガニックのお肉が出されるし、ソーシャライズ(社交)にもなるんだから犬も大喜び。とにかく、すごいのよ~」。
大学時代にネコ(グスタフ)を飼っていた私も、ネコは大好きだし、ペットに対する愛情も分かるのだが、北米人(ミドルクラス、団塊世代)のペットへの接し方には違和感を覚えてしまう。私が平気で、「ネコに残飯をやっていた」とか「ごはんに鰹節を混ぜてあげていた」とか言うと、義父はたまげていた。ネコが「ごはん」やら「きゅうり」を食べるとか、飼い主が「残りもの」を与えているとか、そんなことは信じ難いらしい。
ネコも犬もペットを越えて、家族の一員となり、ヒト化が進む北米である。
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