Sunday, January 2, 2011

Orchid childをどう育てるか

あなたの子どもは・・・

・かすかな匂いにも敏感
・静かに遊ぶほうが好き
・シャツのタグやソックスの縫い目などが気になる
・ちょっとしたことにびっくりする
・周りに知らない人がいない方が仕事を上手に仕上げられる
・感情的に心を動かされることが多い
・友達の悲しみにすぐに気付く
・興奮した日には眠れないことが多い
・痛みに敏感
・完璧主義者
・うるさい場所は嫌い

上の点に該当する箇所が多ければ、あなたの子どもはOrchid Childの可能性が高いのですって。

Globeの記事How to raise an ‘orchid child’ to blossom(January 1, 2011)で、orchid childという名称をはじめて知った。そして、それって私のことだと気付いた。

記事によれば、全人口のうち15~20%があたるorchid childとは、周りの環境に容易に刺激を受ける人たちのことをいう。たとえば、簡単に驚いたり、痛みやちょっとした匂い、粗い衣服に敏感(タグなどが肌にあたると不満を訴える)、芸術などによく心を動かされる、明るいライトなどが非常に気になるなど、全体的に周囲の環境に対して非常にセンシティブな側面が特徴。シャイに見えることが多く、内向的な子どもたちがほとんどだが、内向的なのはlearned behaviourであるという。

研究者によれば、こうした子どもたちは、ストレスの多い家庭や環境で育つと呼吸器疾患やディプレッション、anxiety(精神的不安)などの疾患を患う可能性が高くなるが、一方で子どもたちを保護し、大切に育てていく環境があれば、他の子どもたちに比べて病気疾患を患う確率が低くなり、社会的にも成功する確率は高くなるという。

Orchid childの研究目的のひとつは、親や教師たちにこうした子どもたちをどう育てるかの指針を与えることだが、結果として、orchid childには体罰や強い罰則は単にネガティブな影響を与えるだけなのでやさしく諭すこと、さらに次に起こることを知っていると安心するので、なるべく日常的ルーティーンを与えることなどが挙げられている。

デイケアやドロップイン・センターで他の子どもたちを見ていると、20%は多すぎる見積もりだろうけれど、こういう子どもたちは確かにいる。他の子どもに自分のやってることを邪魔されたら泣く子や、ダイパーに一度おしっこしたらもう換えてほしいと泣く赤ちゃんなど、もうすでに赤ちゃんのころからこうした特徴は見られる。でも、親として思うのだが、こうして研究者に教育の指針を与えられる必要があるのだろうか。子どもをじいっと観察しているうちに、親や教育者であればこういう子どもの特徴は把握できるだろうし、その観察や経験の結果からどういうふうに育てればいいか、専門家でなくてもそのあたりの察しはつくのではないか。

多くの時間を一緒に過ごしている親や教師であれば、子どもたちがどんな子であるか見極めるのは決して難しいことではない。その子どもの性格や特徴によってどういう教育方針をとるべきか、という点も(自分の仕事を効率的にしようと思えば)自ずと察しがつくのではないか。というか、このあたりの察しがつかない親は、子どもを客観的に見つめるという観察が足りないのだろうし、こういう場合、親や教師の仕事は、それはそれは大変なものだろう。

もうひとつ付け加えると、Orchid childはシュタイナーのFour Temperamentsの「憂鬱質」に似ている(シュタイナーは子どもの性格には4つのファクター、Four Temperamentsがあると考え、それぞれ、それらのうちで強いものと弱いものの組み合わせで性格が形成されると考えた。親や教育者はそれぞれのTemperamentsにあわせた対応をしていくことで、その子の能力をより引き出せるという。そのうちのひとつのTemperamentはMelancholic/メランコリックで、日本語では「憂鬱質」とされる)。さらにはローマ時代の医学で言われていたFour Temperamentsも同じことを言っている。これもまたLabelling(レッテルを貼る)のひとつと解せば、今後、子どもたちを対象とした研究が、子どもたちのすべてをLabellingしていく方向に向かうのかという気もする。

ちなみに、私たちの子どもエリックは赤ちゃんのころから何があってもあまり文句を言わない子だった。うんちがダイパーについていようが、環境が変わろうと文句もなく、飛行機でも簡単に眠る子だった。そうした特徴は、驚くべきことに生後1週間ほどNICUに入っていたエリックを見てくれていた看護婦さんたちにも分かったようで、「この子はハッピーな顔をしてよく眠っていることが多いし、とっても育てるのが楽な子になるはずよ」と言っていた。生後1週間で性格がわかるなんて、と疑心暗鬼だった私もエリックを育てるうちに看護婦さんたちの観察や経験に舌を巻いた。そして、同時に、私たち人間の性格の大半はすでに生まれたときに決まっているのだと信じるようになった。そうなると、「性格をかえよう」とすることの無意味性にも気付いた。自分の性格を受け入れ、その性格がうまく機能する環境を整えることの方がずっと大切で意味のあることなのだと確信した。

これは子どもの話だけれど、orchid childが大人になった私にいわせれば、自分の性格を知ることが何より大切。子ども時代は親や教師が環境を変えてくれたけれど、今では自分で環境を見極め、自分が最も快適と思われる環境をつくっていく必要がある。そのためには、「自らを知る」ことが何より必要で、ま、よく考えればそれはorchid childに限ったことではないんじゃないか。性格は変えられなくても、ものごとに対する態度や環境はある程度私たちのコントロール下に置くことはできる。それって、案外、成功の秘訣なのではないか。

ときどき、新聞に掲載される「学術的研究結果」には、驚くほど無意味なものがたまにある。そんなばかばかしいことにお金を使う余裕があるなら、もっと他のことに予算をまわせないものか、とつくづく思う。この研究結果も、実践の場にいる親や教師なら感覚的に分かって実践していることではないのかね?

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