単なる偶然だろうか。今日のGlobe、Toronto Starの両紙のコメントページにAmy ChuaのBattle Hymn of the Tiger Motherをめぐるコメントが掲載されていた。(Amy Chuaに関する過去ポストは以下)http://torontostew.blogspot.com/2011/01/amy-chua-battle-hymn-of-tiger-mother.html
Globe紙のコラムはプリンストン大学の教授(バイオエシックス)のPeter Singer、Star紙はコラムニストのHeather Mallickによるもの。
最近、ほんとうにエイミー・チュアという名前を、Tiger Momという名称をメディアで目にする機会が多い。抜粋部分しか読んでいない私にも、この本が出版的には大成功だということだけは明らかに分かる。
Peter Singerの議論。Tiger Motherアプローチはたしかにエリートをつくりだすかもしれないけれど、子どもがそれで幸せになれるかどうかという点は意識的に無視されている。エイミー・チュアは子どもに成績表すべてA、ただし「体育と演劇以外」といい、集団のなかで協調が要求される演劇や体育を除いていること、さらには音楽や勉強といった単独で成功を収められるものだけを重要視していることから、Tiger Motherアプローチでは社会生活で必要なSocial Skillsを獲得できない点、また、友達や周囲を「なかま」としてではなく「競争相手」として見る可能性を指摘している。このふたつは、子どもを社会的に孤立させ、真の喜び、幸せである「コミュニティのなかで協調的に生きる」側面を子どもから奪ってしまう可能性を助長する。
Heather Mallickはズバリ「Amy Chuaは母親として失格」といつもながら辛口なコメントをしている。Tiger Motherアプローチは、要するに「成功=お金」という公式に基づいている。エイミー・チュアにとっては、いくら子どもがジュリアードに行ったとしても、それはアイビーリーグへの入学を許可され、将来的に経済的約束がされる職業(医者、弁護士、教授など)につながっていくから「成功」なのであって、子どもが音楽を心から愛し、自分のしていることに限りない幸せを感じているからではない。チュアは「子どもを育てた」というが、本当は子どもを育てたのではなく、株式市場に投資していただけなのだ。子どもがどれくらいの報酬(配当)を親に持ちきたらしてくれるかによって、子どもの「成功」が決まるのなら、その親は「失格」以外のなにものでもない。
うーん、興味深い論争! Tiger Motherアプローチでチュアや彼女の子どものように成功した例もあるかもしれないが、失敗例もたくさんあるのではないか。その失敗例は、ピーター・シンガーの議論にあるように自殺やディプレッション、エンザエティーといった精神障害としてあらわれるケースもみられる(アメリカのアジア系女性にとりわけ多い自殺やディプレッションなども、親からのプレッシャーと社会性を身につけられなかったことが原因かもしれないと示唆している)。
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