Monday, January 16, 2012

失敗建築物としてのROM(オンタリオ王立博物館)、そしてカナダ的で美しいAGO(オンタリオ美術館)

AGO: Frank Gehryによるリノベーション
私はROM(Royal Ontario Museum)から遠くないところに住んでいるのだが、ROMに行く度に、この前を通る度に、この建築物の醜悪さと使い勝手の悪さには呆れてしまう。


世界的に著名な建築家ダニエル・リベスキント/Daniel Libeskindによる、世界一級品の建築とされているこの「クリスタル」だが、私には著名建築家のエゴの「結晶」、というか建築物としては大失敗作品としか思われない。


歴史や思想によって細部がほどこされたベルリンのユダヤ博物館を作った建築家の作品とは思えないほど低俗、だと思う。思想性もまったくなし。もともとあった石造りの建築物の北側ファサードに取ってつけただけ、の風貌。それもオリジナルの建築物の方との適合性もゼロ。形が形だけに展示スペースもへんてこりん・・・。こんなんでリべスキントと呼べるの?? 前の古い石造りの方がずっと品格があって好きだわ・・・。


27million(2700万ドル)かかったリノベーションの結果を、実際にお金を出したマイケル・リー・チン氏はどう思っているのだろうか。


それに引き換え、トロント出身のフランク・ゲーリー/Frank Gehryが手がけたAGO(Art Gallery of Ontario)のリノベーションの美しさといったら! 私はフランク・ゲーリーの代表的作品、ビルバオのグッゲンハイム・ミュージアムに対して相反する感想を持っている。一方では、あの無機的な色やファサードには違和感を覚えるが、彼独特の流れるような曲線の使い方には心ひかれてやまない。なので、もちろん彼のAGOリノベーション後に、あの曲線を実際に見たときにはハッと胸をつかれた。


私は建築物のうちでこれほどまでに完璧にオンタリオ州を象徴している作品を知らない。

広大な自然とその自然の静謐さ、美しい水と水脈、ネイティブの持つ自然と人間に関する深い思想、秋のメープルの色、そして土の匂い、水上を静かに漂うカヌーと遠く聞こえるルーンの声。ゲーリーのリノベーションには、確かにこうしたオンタリオ州のエッセンスが感じられる。


AGOがアルゴンキン国立公園や手付かずのネイティブ・ランドに行ってはスケッチをし、トロントのスタジオで作品を完成させたトム・トムソンとグループ・オブ・セブンの作品を多数収蔵していることを考えれば、これほどまでに完璧な建築物はないといえよう。


先日、久しぶりに行ったAGOでGroup of Sevenの画家によるカナディアン・ギャラリーを見たが、やっぱり彼らの絵は素晴らしい(ギャラリーの展示の仕方もすばらしい!)。彼らの絵には、商業デザイン、印象派、日本の浮世絵などいろんな要素が感じられる。アルゴンキンに行くと、まさにGof7の絵の中を歩いているように感じたものだ。
The Group of Seven and Tom Thomson by David P. Silcox


A.Y. Jackson: The Red Maple


Edwin Holgate (The Group of Seven)

Lawren Harris (The Group of Seven)



彼らの絵は絶対に日本人好みだと思うんだけれど、どうして日本ではまったく紹介されていないんだろう。とっても不思議。

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