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Saturday, December 18, 2010

ホリデー時期限定! キャンディ・ケイン・アイスクリーム(bits Magazine掲載)

サンタ・パレードも無事終わり、ホリデー・シーズンに突入したようなので、今日はこの時期限定で登場するアイスクリームPC Candy Cane Chocolate Fudge Crackle Ice Cream(まあ、長ったらしい名前だこと!)について書いてみよう。

個人的には、ミルク濃厚、ハイ・クオリティのバニラフレーバー好みの私からすると、北米人は概して何かごたごたっと入っているアイスクリームがお気に召すと見える。

チョコレートチップは去ることながら、ナッツやキャラメル、チョコレートバーク、マシュマロ、Cookie Dough(これ、夫の好きな味なのだけれど、私、これには今も違和感を覚える。Doughでしょ? Dough!)が入ったアイスクリームは、子どもから大人まで大好きなフレーバー。

そして、この傾向をさらにパワーアップさせているのが、President’s Choice (Loblawsブランド)の”Loads of…”ラインではなかろうか。

北米スーパーマーケットのなかでも新商品開発にとりわけ力を入れているLoblawsだが、この商品ラインに私はいささか面食らってしまった。というのも、本来甘いアイスクリームだけでは飽き足らないとでも言うかのように、さらなる甘さを追求し、北米人の大好きなスイーツをごろごろっと入れている点が売り物なのだものね。

例をあげると、PC Loads of Mocha Almond Fudge Ice Cream、PC Loads of Pecan Butter Tart Ice Cream、Loads of Cookie ‘N’ Crème Ice Creamなど、ファッジやバター・タルト、ブラウニー、クッキー&クリームをはじめとする北米の代表的スイーツがアイスクリームの脇役どころか半分主役として活躍している。

こうして見ると、毎年、ホリデー・シーズン限定で登場するPCのキャンディ・ケイン・アイスクリーム(その名もPC Candy Cane Chocolate Fudge Crackle Ice Cream)が開発された理由もほぼ察しがつく。バニラアイスに、クリスマスに関連する北米的食文化(ペパーミント味のキャンディ・ケインの小さな粒、パキパキのチョコレート、緑と赤鮮やかなソース)を見事、織り込んで、見た目にもクリスマス気分を盛り上げている。

個人的には喜んで食べようと思わないが、実際に私の周りにはキャンディ・ケイン・アイスクリームの発売を今か今かと待っている友人がいたりする(ほぼカナダ人、ペルジアン1名)。毎年この時期、たがが外れたように甘いものに突っ走る消費社会を前に、ちょっぴり唖然とさせられている私だけれど、その友人たちと一緒にアイスクリームを愉しむホリデーを心待ちにしている。

Sunday, November 28, 2010

北米人なら知っている曰く付き・・・ Aunt Jemima (bits Magazine掲載)


(bits Magazine掲載 November, 2010)
北米の食品企業のなかには女性の名前を冠したブランド・ネームを使っている企業がいくつもあって、たとえばBetty CrockerやSara Lee、Aunt Jemima、カナダの国民的英雄とされるLaura Secordなどがその例としてあげられる。これを北米ウーマンリヴと見るか、主婦の購買意欲をそそろうとするマーケティング戦略と見るかは様々だし、それぞれに名前の由来も興味深いのだけれど、今回はAunt Jemimaに限って書いてみたい。

まず、断っておくが、私はこの企業のファンでも何でもない。というより、これまで見たことはあるけれど、今日の今日までAunt Jemima商品を購入しようと手に取ったことは一度もない。先ほど、ふと思いついて買い物にでかけ、写真のパンケーキを買ったのは、このコラムのネタになると思ったから。
北米人なら大抵は知っているAunt Jemima商標は、にっこり笑う黒人のおばちゃん(Aunt Jemima)。初めて見たときから何やら違和感を隠せなかったのだけれど、聞いてみるとこの商標、かなりのいわく付きらしい。


この商標が最初に開発されてから、すでに何代ものAunt Jemimaが存在するが、時代が変わるにつれ彼女の容貌も変化してきた。現在はすっきり・溌剌とした黒人女性だが、過去のものはずんぐりむっくり、低賃金労働が妥当というような黒人女性で、マーガレット・ミッチェルの「風と共に去りぬ」に出てくる黒人奴隷で乳母のマミィを思い出させ(この小説は黒人差別的と批判されている)、まさに、奴隷制度が存在した時代の黒人女性のステレオタイプを未だに(改良を加えながら)引きずっているのである。この商標撤廃を求める署名運動も存在するし、不買運動の動きも続いている。にも係わらず、同社のパンケーキミックスやシロップは北米の大手スーパーには必ず置かれていて、パンケーキといえばAunt Jemimaというほどのポピュラー商品。マクドナルドも去ることながら、やっぱり消費者は政治的メッセージ以上に値段に飛びつくらしい・・・。


期待せずにバターミルクのパンケーキを食べてみたけれど、まあね、食べられないものではない。粉を使った北米加工食品の典型的味なので、きっと北米人には馴染むのだろう。ただし、政治的にみれば問題ありのこの製品、調べれば調べるほど、このパンケーキを購買してしまった罪悪感は深く、深くなっていくのであった…。

Sunday, July 18, 2010

ときどき無性に食べたくなってしまう… バター・タルト(bits Magazine掲載)

bits Magazine(June,2010)
子どもが生まれてこの方、甘いものを食べる機会が減っている。子どもから市販の甘いお菓子を遠ざけているので、自分だけ大っぴらに食べるわけにもいかないし、「大人がなめると薬じゃが、子どもがなめると死んでしまう毒じゃ…」なんて、一休さんに出てくる和尚さんの真似もできないし…。
でも、ときどき、無性に食べたくなってしまうものがある。その名は、バター・タルト。

自国の食べものがこれといってないカナダで、バター・タルトはカナダ生まれの焼き菓子のひとつ(アメリカにはこれとよく似たピーカンパイがある)。イギリス系カナダ人にとっては昔ながらのホームベーキングの味、そしてティーパーティーの確かな脇役。義母の世代では、その家に伝わるバタータルトのレシピがあって、主婦はせっせとバター・タルトを作っていた。義母の友人たちが集まるパーティーでは、必ずといっていいほど誰かが持ってくるし、そこでは繊細なソーサー付きのティー・カップが出されて、そのパーティーの洗練さに私はほほうと思ってしまう。しかし、ホームベーキングが廃れ、この国のティー文化がマグカップ化してからというもの、バター・タルトもまた地に落ちたように私には思われる。

見よ。今では、そんじょそこらのスーパーでチープで極めて粗雑なバタータルトが売られ、まるで伝統など感じさせないトリートに成り下がっている。「甘けりゃいいの!」という人にはいいんだけれど、そうしたバタータルトを見るたびに、私はかつて栄華を極めたシンガーがひっそり場末のバーで歌っているような、そんなイメージを頭に描いてしまったりする。

無性に食べたくなったら、ひっそり買って、子どもがお昼寝の間、あるいは独り遊んでいるすきにさっとキッチンに入って、立ったまま大きな口をあけて食べる。でも、こういうやり方では本当は心苦しい。やっぱりちゃんとおいしく紅茶をいれて、お皿を置いて食べなくては、せっかくのバター・タルトに失礼な気がする。

タルト作りってうまくいかない場合が多いのに、焼きあがると夫とぺろっと食べてしまうので、最近は買うことの多い私。それにしても、私にはおばさまたちのむせ返すような香水のにおいと1セットになっているバター・タルト。エレガントなお菓子のイメージは今も変わらない。

見るからに健康によさそう・カラード・グリーン(bits Magazine掲載)

bits Magazine(April, 2010)
3月末、日本に一時帰国した際、近所の人たちが毎日のように持ってきてくれる筍を、今までの人生で食べた以上に食べた。筍をテーブルに出しながら、畑づくりをしている母が「今はちょうど青いものがない時期でね…」と言っていた。そのとき、トロントってところは1年を通して青い野菜が手に入るのだということに改めて気付いた。

NAFTAのおかげでメキシコやアメリカからやってくる野菜が年中、スーパーの棚を鮮やかに彩っているトロントだが、実は冷帯に位置するカナダでは野菜が作られる期間が極端に短い。なので、冬になると緑色野菜アイテムがぐっと減るが、そんなとき私がよく料理するのがカラードグリーンいう名の、見るからに体によさそうな青もの。

私がカラードグリーンを知らなかった10年前の話…。スーパーでミドリミドリした、大きな葉っぱを手にしたおばちゃんがいた。私はそのころよくやっていたように、すかさず駆け寄り、
「あなたはこれをいったいどうやって食べるのか?」
と訊ねた。彼女は驚きもせず、
「いためたベーコンと玉ねぎといっしょにクタクタになるまで煮込むのよ…」
とあれこれと説明を初めてくれた。そして、最後には訝しそうに、
「コラードグリーンを食べたことがないのか」
と訊ねられ、この大ぶりの葉っぱがコラードグリーンだと教えられた。

早速買って帰ってネット・リサーチしてみると、キャベツやブロッコリの仲間だということがわかった。アメリカ南部やブラジル、ヨーロッパではポルトガルでよく食されるらしい。食べ方は、煮る、蒸す、あるいはレンジにかけるなど、とにかくハードなので調理は必須。

あのときのおばちゃんは「私はカリビアンだからこうやって食べるの」と言っていたが、アメリカ南部などではこうして脂分の多いハムやベーコンなどと一緒に煮たものを食す。旨みが染み出た煮汁もコーンブレッドで浸して食べる「Pot likker」(お皿までなめたくなる料理)として、非常にポピュラーな一品である。
私もあれから何度となく、スーパーでチンゲン菜を買っていたとき、パラペーニョを買っていたとき、コーンミールを買っていたときでさえ、知らない人から「それって、どうやって食べるの?」と訊ねられた。こうした光景は、世界中からいろんなフードが入ってきて、世界の隅々から人々がやってくるフレンドリーでカジュアルなトロントだからこそ。日本ではちょっと見られない光景だろうね。

Thursday, June 25, 2009

北米キャンプに欠かせないステイプル・フード:スモア・アイスクリーム(bits Magazine掲載)

ペルー出身の友人ホセが、今年初めてキャンプに行ったと言う。概してカナダ文化に批判的なホセも、ブルース・トレイルのキャンプはお気に召したようで、「これからは毎年夏に家族でキャンプに行くことに決めたよ」と語ってくれた。
元山岳部員の私としては、アップダウンのない道を歩くのは多少退屈ではあるが、山なしのオンタリオでは致し方ないということで、毎年8月になると夫とともにキャンプにでかけていたものだ。

普段は甘いものには見向きもしない夫が、キャンプに行くとなると調達してくるのがマシュマロ。あれをキャンプファイヤーのまわりで焼いて食べるんだよね、カナダ人は。近くから折ってきた木の枝にマシュマロを突き刺して、キャンプファイヤーの火にかざしている子供たち(と大人)の風景は、日本人の子供がキャンプファイヤーのまわりで「燃えろよ、燃えろ」を歌うのと同じくらい典型的な風景である。直火にかけられ香ばしく焼けた表面、柔らかくクリーミーになった中身のコントラストが何とも言えないらしい。
そして、その極めてシンプルな「焼きマシュマロ」をアップグレードしたのが「S'Mores Ice Cream(スモア・アイスクリーム)」であって、焼けたマシュマロととろけるチョコレートをグラハム・クラッカーでサンドウィッチにしたゴージャスなバージョンである。やはりキャンプのステイプル・フード「スモア」は、「(Have) some more?(もう少しどう?)」に由来する名詞で、あまりのおいしさについつい手が出てしまうという意味なのですって。

というわけで、このスモアをアイスクリームにすれば、平均的カナダ人の心をがっちりつかむに違いないと考えるマーケッターがいても不思議ではない。クッキー&クリームに似た、どこまでも甘いキャラメル味。確かに北米人が好きそうな味である。

私たちにとって8月の恒例行事だったハイキングにキャンプ。「ベイビーが生まれた今年からはそれも断念せねばならないわ」と言った私に、カナダ人の知人は「僕なんて0歳からキャンプに連れて行かれてたらしいよ」と語った。幼児を乗せたカート付き自転車で町中を走るカナダ人を初めて見たときのような驚愕と畏怖の念を覚えたね、あのときは…。

まったりした至極のスプレッド:ババガヌージュ(bits Magazine掲載)

トロントの日本語マガジンbits Magazineに連載中のフードコラム「謎のフードアイテム」の転載。

今回は初回ということで、大好きな中近東料理について書いてみよう。日本では中近東料理なんて食べたことのなかった私だが(だいたい、そんなレストランは見た覚えがない)、今ではクッキング・コースを取ろうかと思うほど中近東料理への思いは深刻化している。中近東料理のすばらしさを一言で言うならば、ナスやオクラといったどこにでもある野菜を、トマトペーストやハーブ、スパイスをふんだんに使うことで、奥行きのある極上の一品として仕上げることだと思う。

その最もよい例がババガヌージュである。「近頃、ヤッピーなパーティーに行くと、これが必ずアペタイザーとして出されている」と言われるように、ここ数年トロントのヒット商品として、大手スーパーでも簡単に手に入るようになったババガヌージュ。材料は、ナスとタヒーニ(100%ごまペースト)、オイル、ガーリック。ほらね、本当にどこにでもある材料であることがお分かりいただけるだろう。見た目は、まるでビーチの砂を固めただけのようだし、「ラベルの‘ババ’がちょっとあやしい…」などとあなどってはいけない。
とにもかくにも、ババガヌージュを一口ふくんでみてほしい。そのまったりとした食感はまるでベルベットのよう。味はといえばスモーキーなナスの風味が幾層にも重なり、野菜とは思えない奥深さに「レバーのパテみたいだ!」と言ったフランス人もいたとか。とはいえ、材料と同様、作り方も至ってシンプルである。ナスを丸ごとオーブンで焼いて、中身をマッシャーでつぶす。あとはタヒーニ、オイル、つぶしたガーリックを混ぜ込んでピュレーにするだけ。「なるほどね、だからほんのり焼きナスの味がするのね」と思われることだろう。野菜スティックやピタパンにつけてアペタイザーとしてもいいし、ライ麦パンにたっぷり塗り、グリルしたマッシュルームやカリフラワーなどをはさむと、売りに歩きたくなるほどグルメなサンドができあがる。