Monday, May 2, 2011

カナダ総選挙(2011)とカナダ政治の傾向

http://www.theglobeandmail.com/news/politics/new-political-era-begins-as-tories-win-majority-ndp-seizes-opposition/article2006635/

まだ開票作業は続いているが、どうやらConservative(保守党)が3期目の政権をとり、さらにはMajority Governmentになる見通しが高くなっている。NDP (新民主党)は第2党に躍進、公式に野党第一党となった。惨敗を被っているのはLiberal(自由党)とBQ(Block Quebecoise)。

Conservativeはキャンペーン中に「過半数はないだろう」と自ら宣伝し、国民の票が保守的な経済政策を求める国民の票がNDPに流れるのを防いだように見える。なかなか小ざかしいやり方だ。

ハーバード大学の職を辞して自由党に加わり、党首として今回の選挙に臨んだマイケル・イグナティエフは、自らの議席すら確保できるかどうかわからない接戦を強いられている。イグナティエフの退陣は確実だろう。自由党ナンバー2のボブ・レエは私の選挙区(ローズデール)でまあ楽勝しているが、きっと彼が自由党を率いていくことになるに違いない。

ケベック州の独立をうたうBQ(ブロック・ケベコワ)の党首ジル・デュセッペも自らの議席をNDP候補に譲り、彼の今後も退陣しかないだろう。

ジャック・レイトン率いるNDPの躍進には目を見張るものがあった。今のところ手に入る情報をもとにすれば、NDPはケベックで票を伸ばし、これまでBQに流れていた票を確保したように見える。NDPは興味深いことに、ケベックの(カナダからの独立)を前向きに受け止める声明を発表したこと、また、ケベコワ(ケベック人)の歴史的に保守系政策に対する嫌悪感をから、「何としても保守党だけは避けたい」という意思表示と見える。

そうなると、今後、注目したいのは、自由党Liberalと国民民主党NDPとの連立政権の可能性だ。次期党首となるだろうボブ・レエはもともと国民民主党のオンタリオ州議会議員で、NDPが州政権をとったときには党首として、オンタリオ政府の州知事として画期的な政策を敷き、いくつかは成功したが、社会福祉にお金をつぎ込んで州政府を多大なDeficitの状態に追い込んだ。そのことから、オンタリオ州ではFiscally conservativeな市民の間では不人気だが、彼とNDPの間で連立の動きを探ることは可能だろう。

ヨーロッパでもそうだが、カナダでは人々がFiscal conservatismになっている傾向があるように見受けられる。これは私がカナダに来た12年前と比べて、カナダ人の政治意識における最も大きな変化だと思う。Fiscal Conservatismの日本語が何なのか思い出せないが、これは、小さな政府(国営企業の私有化)、税金は抑える、社会福祉には消極的、ビジネスに甘い・・・などの特徴を有し、そのため、資本主義の恩恵を被っている人、とりわけビジネス分野の人たちから支援される傾向にある。この傾向が進むにつれ、教育や社会福祉、移民向けサービスなどに力を入れてきた自由党Liberalは票を失ってきた。

しかし、アメリカとの違いとして、財政政策では保守化しているカナダ人も、やはり社会的な保守化(Social conservatism)はしていない点は重要なポイントだと思う。たとえば、「中絶反対」とか「キリスト教」とか「犯罪は徹底的に処罰する」という政策は大多数のカナダ人には受け入れ難い。やはり社会的には自由主義なのだ(Social liberalism)。

話が広がってしまったが、しかし、しかし、本当にこれは大変なことになった。今後、過半数を確保した保守党政府は今まで以上に経費削減や社会福祉の予算をカットするだろう。夫の大学も影響を受けないわけがないし、とりわけ人文系は予算を削られるだろう(彼らはマネジメントやビジネス、サイエンスには喜んでお金を出すんだが・・・)。移民向けサービスなどの予算も今まで以上に削られるだろう。ここはひとつ、野党第一党となったNDP、好感度ナンバーワンのジャック・レイトンにがんばってもらいたい。

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