Wednesday, July 6, 2011

女性蔑視とDV(ドメスティック・バイオレンス)

6月25日付けToronto Star紙は、バングラデッシュ出身のUBC(ブリティッシュ・コロンビア大学)の院生が夫の暴力によって視力を失い、顔面に傷を負うという事件を報じていた。UBCに留学しているRumana Monzurは、夫と5歳になる娘に会うためにバングラデッシュに一時帰国したが、夫からのDV(ドメスティック・バイオレンス)を受けて重態に陥っている。夫のHasan Sayeed Sumonは妻が他の男性と恋愛関係にあると疑っていたことから、ジェラシーによる暴力という説もあるが、詳細は明らかにされていない。この事件そのものはDVという世界に共通する問題だが、それと同時に南アジア特有の問題でもある、と指摘する声もある。

たとえば、バングラデッシュでは、60%にあたる女性が家庭で暴力を受けているという統計があり、これは他の南アジア地域でも同様である。トムソン・ロイターズ・ファウンデーションの研究結果によれば、世界で女性にとって最も危険な国としてあがったパキスタン3位、インド4位と、南アジア圏が入っている(ちなみに、最悪はアフガニスタン、2位コンゴ、ソマリア5位)。調査結果は、パキスタンでは10人に9人の女性がDVを受けていること、インドでは半数の女性が18歳未満で結婚していることをあげている。エドモントンに拠点を置くインド系カナダ人のグループIndo-Canadian Women’s Association(インド系カナダ人女性協会)の副会長は、インドをはじめとする南アジアの国が歴史的に男性優位の国である点を指摘する。

この記事を読んで思い出したのが、数週間前にインドのニューデリーでSlut Walk を開催しようとしている女性のインタビューだった。このインタビューで興味深かったのは、彼女が「最近のニューデリーでは、以前に増して男性が女性に対してあからさまなハラスメントをするようになった」「地下鉄に女性ひとりで乗ると、獣のような目で上から下までじろじろと眺める男性が多数いる」と言っていたことだ。こうした日常的なハラスメントは、女性が自由に移動し、自由に仕事をする権利などさまざまな権利を奪っている。そして、ニューデリーがインドのなかでもっとも女性に対するハラスメントが起こっている原因として、親族の誰かが政府に仕えている役人であることを挙げていた。

私の友人で、北インド出身の両親を持つシミも以前、大変な目にあっている。トロント郊外で生まれたシミは、両親の勧めでインドの男性といささか無理矢理に結婚させられた。しばらくは優しい夫だったが、次第に家庭で暴力をふるい始めた。外ではまったくそうしたそぶりを示さないため、両親に言っても信じてもらえない。暴力はどんどんエスカレートしていった。たまたまシミの母親が電話をしたとき、夫は母親の声をシミと間違って、ひどい剣幕で怒鳴り、ひどい罵声を浴びせ始めた。それでやっとシミの両親はことの重大さに気付き、離婚の手続きをとったという。シミは私に「私はカナダ生まれのカナダ人だから、インドの男性のひどい女性差別意識には我慢ならない」と言っていた。

honour killingsというのもカナダでは南アジア系の家庭にたまに見られる。これは、妻が不倫したとか、娘が結婚しないうちに妊娠したとかいう理由で、「家族に恥をかかせたのだから、死んでつぐなうべき」という論理によって女性が家族メンバーに殺されるという事件である。カナダではこうしたhonour killingは2002年以降12件、パキスタンでは年に1000件も起こっているという算定もある。

私個人もインドに滞在したことがあるが、女性蔑視、あからさまなハラスメントを幾度となく女性として経験した。インドの男性には女性は男性以下という考え方があるのを肌で感じた。先のインド系カナダ人女性協会の副会長は、「インド男性の女性に対する態度は、奴隷に対する奴隷主と同じ」であると指摘する。「暴力は恐怖を植えつけるためのもので、それによって奴隷(女性)を従属的地位に貶めさせるもの」、つまり女性に対する構造的、社会的枠組みのなかでなされているという。こうした構造的、社会的枠組みを切り倒すには革命的な動きが必要である。ニューデリーでのSlut Walkはヨーロッパやアメリカの都市で行われるもの以上に多くの意味を持つことだろう。

参考:Attack was brutal, but not unique by Oakland Ross, Toronto Star, June 25, 2011

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