Tuesday, July 19, 2011

カナダの大学教育と就職事情

最近、カナダで仕事探しに苦戦しているグループといえば、移民と新卒である。移民が仕事探しに苦戦をしているのは何も新しく始まったことではないが、「新卒」はかなり新しい傾向である。

たとえば、私も大学を卒業したばかりの人たちの就職サポートをしたことがあるが、University of TorontoでUrban Planningを専攻し、半年間ほど仕事を探しているが面接にさえ至らないという女性がいた(そして、私の前でボロボロと涙を流した)。同じクラスメイトも似たり寄ったりの状況らしい。彼女といっしょにUrban Planning(約10年ほど前には、トロントでは成長分野の仕事だと言われていた)関連の情報を集めたが、ポスティング(求人情報)を見ると、すべて「3年以上の経験」を要求していて、彼女のように新卒・エントリー・レベルでの仕事はまったく見当たらない。

そこで、今、トレンドなのは、大学を卒業してからカレッジや職業専門学校に行き直すか、Graduate School(大学院)に行くこと。カレッジや職業専門学校は、大学とは違って就職を目的とした学校で、1年から3年ほどで資格や専門トレーニングが受けられる。つまり、仕事に直結している。ちなみに、以前は「カレッジ」といえば、高校を卒業した人がすでに設定している仕事を得るために行く学校だったが、最近はめっきり年齢があがっている。移民のなかにもカレッジで特定の職業訓練を受ける人が多いうえ、最近の経済不況でキャリア・チェインジャー(転職者)が増えていることもある。ここ数年の不況の波にのまれず、非常な利益をあげているのがカレッジなのだ。

大学院に行くというのもひとつの方法だ。ただし、もし経済的余裕があれば、の話だが。カナダの大学生は大半が自分で学費をまかなっていて、最近の学費値上げの影響で多くの学生が返還義務のある奨学金を政府から受けている。そのため、「大学院に行く」というのは経済的に恵まれた人のためのオプションであるといえる。

カナダはここ数年間、経済的にはマイルドな不況にある。製造業やITは最も大きな打撃を受けた分野である。ただし、案外と知られていないのが、今、こうした状況でも「仕事がある」分野が存在することだ。それは、プラマーやカーペンター、電気工事といった熟練工の仕事で、こうした分野では実は人手が足りず困っている。こうした仕事は高校卒業後、見習い工として実際に経験のある職人に習いながら仕事をするわけで、カレッジや職業学校に行く必要はない。かといって、こうした熟練工の仕事がすべての人にあっているかというともちろんそんなことはない。なかなか難しいところだ。

大学を出て仕事が見つからない傾向が社会問題化しているカナダでは、大学のあり方を問いただす動きも出てきている。仕事に結びつかない勉強を教えて意味があるのか、大学を2年にすべきだ、との声も出ている。各大学もそれを考慮しながら、カリキュラムを組み直す可能性もある。私はもちろんこうした意見には反対であって、そのことはまた項を改めて書きたいと思う。

No comments:

Post a Comment

コメント大歓迎です!