Sunday, August 7, 2011
Hiroshima Day (ヒロシマ・デー) in Toronto
8月。広島生まれの私は、やっぱりこの時期になると戦争について考えることが多い。
今年は、North York Civic Centre(ノースヨーク区役所)で行われたHiroshima, Nagasaki Poster & Survivor’s Artwork Exhibitでボランティアをし、8月6日はFaith & Abolition: No Nuclear Weapons, No Nuclear Powerの集会に参加した。どちらもToronto’s Hiroshima Day Coalition主催で、私たちのTA9(Toronto Article 9)もCoalitionに名前を連ねている。
Exhibitionは、原子力爆弾の開発と背景などの説明、原爆や被爆者の写真をパネル展示していて、その展示を見た数人からコメントを聞く機会があった。ひとりの人は「本当にばかげたことだ! 人間というのはなんてばかなのだ」と非常に憤慨していた。また、別の人は「原子力は平和的利用に限るべきだ」とコメントを残していった。子どもにあまりにも生々しい写真を見せないようにしていた母親もいた。そして、「私は1945年、広島にいた」という女性は、彼女の息子を指して「彼は1945年4月に広島で生まれたの」と日本語で言った。詳しく聞いてみると、彼女は日本人ではなくて、韓国(当時は日本に併合されていた)から出稼ぎに広島の工場に来ていたという。その後、広島から離れたので被爆はまぬがれたらしい。しかし、「もう少し長く広島にいたら、どんなことになっていたか…」と視線を落とした。帰り際、彼女が「カナダはいいね」としんみり言っていたのが印象的だった。
そのあと、ボランティアに来た日系2世のPaulは、「バンクーバーで生まれたが、原爆が落とされたときに広島にいた」と流暢な日本語で話してくれた。1945年8月6日、東広島市に滞在していたPaulは、頭上にB29が飛ぶのを見て、しばらくして大きな爆発音のあと、煙がもくもくと広島市上空に上がるのを見たという。当時は何が起こったのかまったく分からなかったが、翌日、近所の人が広島市の駅員として市まで働きに行って帰ってきたが、その翌日に、突然元気だったその人が死んだことから、町の人たちは「なにかとてつもなくおそろしいことが起こっているから、広島市にはぜったいに行くな」と話し合ったという。
広島、長崎での原爆投下を実際に経験した人がいまも健在だという事実が、非常に重く感じられた。
8月6日、The Church of the Holy Trinityで行われた集会は、日本人の私が知っている「追悼集会」という色合いはまったくなく、「反核、反原発」というGoalを目指す毛色の違う団体がそれぞれに主張をそれぞれのやり方で繰り返し、「ヒロシマ・ナガサキ」は彼らにとっては反核のシンボルなのだと強く実感した。
従来は8月6日のHiroshima Day Coalitionの集会は、トロント市庁舎前のNathan Philip Squareで行われ、政治的には左派の市長はMayers for Peaceにも名を連ね、「非核都市」を宣言したトロント市は全面的にバックアップしていた。今年はSquareの改修工事を理由に、集会は通りを挟んだThe Church of the Holy Trinityで、灯篭流しはいつものようにNathan Philip Squareのプールで行われた。また、従来は「反核」の集会であったが、今年は3月の福島原発事故を受けて、マンデートに「反原発」を盛り込むことになったのは新しい動きである。
個人的には「憎悪は暴力ではなく、愛で包むべき」といった宗教的なことばや、プレーヤーにはちょっとついていけなかったというのも事実だが、こうして政治的信念を同じくする人たちの情熱というかポジティブな態度にはいつもながら勇気付けられた。彼らのPositivityは、部分的にオバマ大統領の核兵器に対する態度から来ている。オバマ大統領は、各国に呼びかけて核を減らそうと積極的に動いており、NPT(Nuclear Non-Proliferation Treaty)を外交政策の要としている。
いろんな団体の代表のスピーチは興味深くはあったが、ときに退屈で、ときに私は自分の思いに浸っていた。退職したトロント大学社会学部の教授が、世界にはこれだけの核兵器があって、これだけの威力があって…、と話をし、Clearn Airの代表が、原子力発電に欠かせないウラニウムは、核兵器に簡単に変えられる…というのを聞きながら、私が考えていたのは、「核兵器、原発の脅威は人間の想像力を超えているのに、どうして核兵器、原発は存在しているのか」ということだった。(続く…)
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