Thursday, September 15, 2011

オンタリオ州州選挙の行方+経済不況と保守化の動き

10月6日が投票日となったオンタリオ州州選挙。町を歩いていて、各政党の選挙バスを見るにつけ、オンタリオ州は選挙期間真っ只中であることが感じられる。マギンティ州首相率いるLiberal(自由)党が3期連続で政権を握るのか、それともティム・フダックのConservative(保守)党により政権交代になるのか、ジャック・レイトン人気で支持率が伸びているアンドレア・ホーワスのNDPが追い上げるのか。先日のGlobe紙によると、現時点の電話調査では、自由党の支持率27%、保守党26%と実に大接戦になっている。


・選挙の争点
州選挙の争点はいくつかあるが、とりわけ14billionにものぼる負債をどうするかが重要な争点になっている。その他の重要課題としては、経済不況における経済対策、失業対策、教育問題、エネルギー問題といったところだろう。

 前回の選挙では、ジョン・トーリー保守党党首がユダヤ系の教育委員会を作ると言ったことで選挙に破れた感じがあるが(あれがなければ保守党は勝利していた可能性が高い)、今回もこうしたWedge issue(最優先課題ではないが、決定的に結果を左右する問題)として取り上げられているのが、いわゆる”Foreign worker”問題。

マギンティが「カナダに来て5年以内の新移民(Highly-skilled new immigrants)を雇用すれば会社に補助金を与える」と公約を掲げたのに対し、フダックが「オンタリオ州民の5万人が失業しているのに外国人労働者(foreign workers)にAffirmative actionを与えるなんてもってのほか」と非常に感情的に反発した。


これに対してマギンティは、フダックが「移民」という言葉を故意に「外国人労働者」と読み替えたことを批判し、「恐怖をあおって票を割ろうとしている」「私のオンタリオにはUsとThemはない」と主張。おまけに、フダックをRacist(人種差別者)と呼び、謝罪まで要求している。


フダックは自分の主張を変えず、今も”foreign workers”と”foreign students”(海外からの優秀な留学生に奨学金を与える自由党のプログラム)を攻撃し、オンタリオ州で失業している、もしくは失業の恐怖に怯えている投票者の票を獲得しようと躍起になっている。

 ・オンタリオ州の失業問題
しかし、Globe紙(Sept.13, 2011)によると、オンタリオの失業問題は大きな要であることは間違いないが、失業問題をよく分析すると実際に大きな痛手を被っているのは移民以上に若者である、という。


オンタリオ州の失業率は、現在7.5%。そのうち、若者(15~24歳)では16.9%(2010年)と2倍以上にのぼり、この率はカナダ全土でも最も高い数字である。以前、カナダにおける若者の失業問題についてポスティングしたが(Labour Market労働問題のラベルを参照)、この傾向は確かに連邦レベルでも、州レベルでも政治家がただちに手をつけるべき問題である。働き盛りの若者の労働力がアイドリング状態になっていれば、経済的損失はもとより、今後グローバル・マーケットにおけるカナダの立場を弱めることになる。

 
さらに言えば、去年から中近東で始まったThe Arab Spring、あるいは8月末にロンドンで起こった暴動に見られるように、失業中の若者の不満は社会を大きく揺るがす不安定要因となる。

本来ならば、こうした失業問題や経済問題に討論の時間が割かれるべきなのに、先述したように部分的問題である"foreign worker"に議論が集中することに失望を表す州民も多い。

生涯左派の私は保守党の公約に危機感を感じるし、先日、オンタリオ州州議会ビルの前で見た保守党の選挙バスを見るにつけ非常に不快に思った。バスには、全面にFear, Anger, Unemployment, bad to worse, losing a job, uncertaintyなどという文字が書かれていて、保守党はこうした言葉を「州民の声を反映したもの」と弁明しているが、市民の恐怖をあおって自分の陣営に票を入れてもらおうとするのはいただけない。

前にも触れたが、オンタリオ州レベルでも保守党が勝利すれば、トロントに住む私たちにとっては、市政、州、連邦の3レベルですべて保守党政権が確立されることになる。ヨーロッパ各国をはじめ、先進国では保守党の勢い確実に強まっているのを感じる。経済的先行きが不安定なこの時期、これも時代の趨勢なのだろうか。はじめてトロントにやってきたとき、私にとってはカナダが福祉国家である事実が手にとるようにわかったものだが、これも世界経済の情勢が変わるにつれ、変化していくのであろうか。今回の州選挙の行方に今後も注目したい。

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