2011年のオンタリオ州一般選挙は10月6日の投票日を経て、Liberal(自由党)によるマイノリティ政府が確定した。マギンティ政府は予想に反して3期目の続投となった。
各党の議席数は次のとおり。Liberal(53席、前回比-17)Conservative(37、+12) NDP(17、+7)。
Liberalはマジョリティ政府に1席足りなかったが、接戦といわれていた割には票を伸ばし、Conservative(保守党)と大きく差をあける結果となった。NDPがこれだけの議席数を獲得したのは政権をとった時代以降初めて。投票率は49.2%と史上最低。
・トロント、オタワ以外はほとんど青
政党ごとの色分け選挙結果を見ると興味深いのだが、トロント、オタワの赤(Liberal)以外は大半が青(Conservative)になっていて、大都市に対する地方との差が浮き彫りになっている。さらに、GTA(グレーター・トロント)で見ても、合併前にトロントだった中心部は赤とオレンジ(NDP、とくにセンターといわれるダウンタウン)で、それを囲むように青が広がっている。トロント市内ではConservativeはまったく議席を獲得できなかった。
理由のひとつには、昨年選出された右派のトロント市長フォードの支持率が下がっていることが影響していると見られている。というのも、フォードは市長就任以来、市の抱える負債に取り組むため、さまざまな社会福祉プログラムや市営サービスを削減しようとしており、これに対するトロント市民の反発がすさまじい。たとえば、図書館の閉鎖というフォード案に対しては、カナダどころか英語圏でも屈指の作家マーガレット・アトウッドが反対陣営を張って市民運動にまで発展し、結果、トロント市議会は図書館閉鎖をキャンセルするという結果に終わった。連邦政府と市政府がConservativeによって運営され、そのうえ州政府まで保守派になってはたまらない、という危機感がトロント市内には確かにある。
・リーダーの資質
今回の選挙戦で、Liberal党マギンティ党首は明らかによいイメージを売ることに成功したと思う。州首相という信頼できる品格をそなえ、いつだって自信に満ちた話し方をしていた。討論などで攻撃されても、いつも一定の距離と理性を保ち、情熱と冷静さをそなえた対応は見ている人に安心感を与えたと思う。
一方、Conservativeのフダック党首は、選挙戦のあいだに取り返しのつかない2つの失敗をしでかしている。ひとつは、Newcomer(移民)をForeign worker(外国人労働者)と呼んだこと、もうひとつはオンタリオ教育相のガイドラインを批判しようと、ホモフォビックな攻撃的広告をまわしたことである。前者に関しては、人権擁護団体などから謝罪を求める動きもあったにもかかわらず、最後まで自分の非を認めないという頑なな態度だった。この彼の態度、加えて2つの失敗から、とりわけ移民人口の多い選挙区、あるいはDiversityをよしとする大都市圏で、Conservativeに対する不安感が広がっていたという気がする。
・経済的な先行き不安
しかし、各紙の報道を見ている限り、さらに私の実感としても、結局のところ、オンタリオ州民の脳裏にあったのは今後の、先のみえない経済的不安だったと思う。失業率は増え、アメリカ経済およびヨーロッパ経済の大混乱から、グローバル経済への波及と経済的不安要因は拡大し続けている。マギンティ政府の政治政策を見ていると、大きな予算削減はしないし、大きな抜本的経済改革もしない。しかし、現状維持をうまくやってきたという感じがある。そうした安心感も今回のLiberalの勝利に大きく影響したと思われる。
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