Thursday, November 10, 2011

グローバル問題としての若者の失業率の高さ

ヨーロッパの経済危機が抱える問題は複雑だが、そのなかのひとつ、若者の失業率の高さ、というのを取り出して考えてみたい。


というのも、若者の失業率の高さは、さまざまな社会問題の根源的原因となっているからである。ここ最近見られる世界を揺るがした事件、たとえばアラブ・スプリングも、Occupy Wall Streetの動きも、さらには今年8月にロンドンを驚愕させた暴動も、中央ヨーロッパ各国やロシアでネオナチが台頭しているのも、直接、あるいは間接的に「若者の失業」問題と関連がある。


昨今では、ILO (International Labour Organization) までグローバル規模で広がっている若者の失業率の高さを懸念する声明を発表した。ILO報告によれば、世界中で失業中の若者は約75 millionにものぼるという。ILOは、若者の失業が長期間続けば、社会基盤を根底から揺るがし、社会の不安定要因になりえる、と警告している。(ちなみに、失業中、というのは仕事を積極的に探している人にあてはまり、仕事探しを諦めた人口は含まれていない)


カナダでは失業率は現在7.3%だが、最近、過去10ヶ月のうち、54,000件もの仕事が失われたというレポートが発表された。失業中の人口をグループわけをしてみると、若者が最も高く、続いて移民という順番となっている。先日、カナダの移民政策における変化について書いたが、仕事探しが行き詰まっているのはなにも移民だけではなく、もっと大変なのは若者というのが事実である。そのため、「海外から移民を受け入れる前に、カナダで職を得られない若者人口を何とかすべき」という意見も最近、ぼつぼつ見受けられるようになっている。


ところで、世界中で、グローバル規模で若者の失業率が増えているのは何故なのか。私がかき集めた情報によると、グローバル経済そのものが低迷し、全般的に仕事そのものが減っている状況のなかで、学校を卒業したばかりの、経験のない若者が不利益を被っている、という図が浮かび上がってくる。一方では、「定年年齢」を法的に解除した先進国では、ブーマー世代が引き続き仕事を続けている、というか仕事を続けざるを得ない現状もある。ブーマー世代は多額の借金を抱えていることが多く、おまけに子どもたちは大学を出ても就職できないので実家に同居するというケースも増えていて、そのサポート役をしている人たちも多い(これはカナダの状況だけなのかもしれないが)。


(ちなみに、先進国で失業率を比較的低く保っているのはドイツで、ドイツ政府は学校を出たばかりの若者に対して徒弟制度やインターン制度などを提供しており、それが功を奏していると見られている)


若者の失業が、社会に対する憤懣として具現化したのが、アラブ・スプリングであり、世界中に広がっているOccupyの動きである。こうして社会構造の変革を訴える政治的な動きであればまだいいが、一方では憤懣をかかえた人口が暴動化したり、移民や外国人というマイノリティに標的を定めて排斥運動をするような形も見られる。こうした傾向は、最近、ヨーロッパで噴出している移民排斥、マイノリティ弾圧と大きな関係がある。今年7月末、ノルウェー(オスロ)のテロ事件を起こしたブレイビク容疑者の反移民思想を一部の狂信者の妄想と無視するには、部分的に関連する事件がヨーロッパで多数起き過ぎている。


1994年、ジェノサイドが繰り広げられるルワンダに国連平和維持軍司令官として派遣されたロメオ・ダレアが言ったように、将来に希望を持てない人たちはどんな残虐なことにでも手を貸すようになる。失業率を放置する危険性は強調されてしかるべきである。


思うに、戦後続いてきたグローバル経済システムは、破綻の兆候を随所で見せているのではないか。若者の失業率の高さは、その兆候のひとつではないか。Occupyの動きは、金融業界と政治をターゲットにしているが、それよりもっともっと深いところに、実は問題は横たわっていると思う。大量に無駄なものを作っては破壊し、環境を破壊しながら、「消費こそが経済を助ける」という土台に基づいたこのシステムにかわる、新しい経済システムをつくりだす必要があるのではないか。

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