Monday, October 3, 2011

世界に広がるOccupy Wall Streetデモンストレーション

先月末、10人以下のカレッジ学生がウォールストリート付近のZuccotti Parkで始めたOccupy Wall Street(ウォール街の占拠)というデモンストレーションが日を追って拡大している。10月1日の土曜日には700名もの逮捕者も出たが、この逮捕により今後、参加者は増加するだろうと見られている。

これが単独のものなら特別に興味を惹かれはしないが、この動きがマンハッタンを起点として世界の各都市に飛び火する可能性があることから、私も様子を見守っている。

写真を見る限り、参加者は若者たちが大半のようだが、Globe紙によれば、日を追うに従って、年齢や職業に多様性が見られるようになっているという。

このデモンストレーションはウォールストリートに代表される金融界、さらには金融界を優遇してきた政治に対する苛立ちが発端となっている。アメリカでは失業率が10 %を超え、今後もこの状況が悪化をたどるだろうと専門家が見ているなかで、一方では政府は多額の税金を使った財政援助には多くの市民が反対している。

トロントのオーガナイザーによれば10月15日にはベイ・ストリート(トロントでウォール街に相当する金融街)で同様のデモが予定されているという。また、カルガリー、ビクトリア、オタワ、モントリオールなどの都市でもデモが企画され、トロントでは800人、バンクーバーでは1000人ほどの参加者が見込まれる予定。また、メキシコ、オーストラリア、ヨーロッパの都市、東京など、世界の都市に今後、飛び火するだろうと見られている。

新聞を読む限り、このデモンストレーションには、はっきりした政治的メッセージがなく、従来の政治的デモとは異なる部分が多い。また、多くの参加者がソーシャル・メディアを駆使している点も、最近のデモのトレンドを踏襲している(彼らは独自にジャーナルまで発行して、ことの成り行きをインターネットを通して発信し続けている)。

「ウォール街の占拠」がアメリカで始まったことは意味が深い。いくらアメリカが多額の負債をかかえていようと、どんなに貧困率が高かろうと、やはりアメリカの富に比することのできる国はない。Forbesを見ても、世界の富豪のうち、アメリカ人の割合は圧倒的に高い。

かくして、アメリカでは一握りの人たちが多額の富を手にしていることにある。つまり、ウォール街は世界金融界の中枢、即ち、世界経済の中枢なのである。

2010年につくられたドキュメンタリー映画Inside Jobには、金融界が一握りのエリートが巨額の富を手にできるような構造になっていること、内部がいかに倫理的に腐敗しているかを暴露していく映画だが、それを見ると政治家もこの金融界とグルになって利権を得て来た歴史がはっきりと見て取れる。

金融界のGreed(欲)によって導かれたリーマンショック以降、北米では金融界に対する不信感(さらにその失敗の受け皿を引き受けてきた政治に対する不信感)が強くなっていると私も感じる。

こうした金融界の状況を知ると、この業界の根底に「不正義」の存在を認めざるを得ない。経済的に社会の下層にいる人たちは、少しは生活の質が向上するとはいえ、この経済的構造ではほとんど不可能に近い。私の感じでは、世界経済の構造のなかにすでに「不正義」が存在している。今回のデモは金融界に対するそうした基盤的な批判になりえるのだろうか。

一方では、市民の間に広がる不満がある。失業し、生活保護に頼っている人たち、仕事をしたいのに見つけられないという苛立ち、借金をして手に入れた家を失って財産を失った人たち。そんな人たちが、金融界に多額の税金をつぎ込んで、彼らの失敗の尻拭いをしているのを見ると、Frustrationを感じるのは当たり前だ。そして、この感情に自分の人生に対するDesperationを感じると人は何でもやりかねない。

政治家は、国民の間に広がるDesperationを軽くみてはいけない。ここで再び、Arab Springがひとりのを感じた若者の自殺から始まったことを想い起こす必要がある。

この動きはどこにいくのか。これによって何が変わるのか。世界経済の構造を変えるほどの動きになるのか。今後の行方を注意深く見守っていきたい。

Related Articles/関連記事:
http://torontostew.blogspot.com/2011/10/corporate-greed.html

No comments:

Post a Comment

コメント大歓迎です!